2011年5月21日土曜日

独自の幼保一体化?渋谷方式に注目集ま?

 2013年度の導入を目指す幼稚園と保育所の一体化施設「こども園」(仮称)について政府の議論が迷走する中、国の枠組みに入らず、独自に一体化施設を展開する東京?渋谷区が関係者の注目を集めている。

 待機児童対策に追われる現場では、親子のニーズに応じた取り組みが早急に求められていることが背景にあり、具体策を打ち出せない政府へのいらだちは高まる一方だ。

 「こうやって丸めるんだよ」。渋谷区立「山谷かきのみ園」では、5歳の男の子が3歳の女の子にパン生地のこね方を教えていた。同園は昨年度まで4、5歳児対象の幼稚園。区が条例を制定し、今年4月から保育所機能を加えて1?3歳児を受け入れ、幼保一体化施設として再出発した。

 昨年度の園児数は22人と定員の4割だったが、現在は1?3歳が28人で入園は順番待ち。4、5歳児も午後7時半までの保育が可能となって申し込みが急増、来年度はほぼ満員の見通しだ。施設長の中村リヨさん(62)は「幅広い年代の子どもが触れ合えるので、教育効果も高い」という。同区は来年度、再来年度も1か所ずつ増設する方針。

 長女(5)を預けている美容師の母親(38)は「仕事が終わる6時過ぎまで預かってくれるので助かる。幼稚園としての教育を受けられるのもうれしい」と話す。

 もともと幼保一体化施設には、国が06年に導入した「認定こども園」があるが、二つの制度を抱き合わせただけで、厚生労働省(保育所)、文部科学省(幼稚園)とそれぞれの所管に申請が必要。事務作業が煩雑なため施設数は532か所(4月現在)と、目標の2000か所に遠く及ばない。

 渋谷区の施設はこの制度の枠外で、法的には認可幼稚園に認可外保育所が併設されている形。厚労省も「渋谷のような例はあまり聞いたことがない」という。独自策を選んだ理由について区の担当者は「待機児童の増加が深刻で、早急な対応が必要だった。幼稚園の生き残り策でもある」という。

 同区の待機児童数は今年4月現在で78人と2年前に比べて2?6倍。一方、全国的に幼稚園児は1978年度をピークに減少し、文科省によると昨年度の幼稚園定員に対する充足率は公立が約50%、私立が約75%。

 幼稚園の空き空間を保育所として活用できれば即効性のある待機児童対策になるが、「認定こども園」の基準をクリアするのはスペースなどの問題で難しく、2歳以下を受け入れる保育所の条件として調理室新設なども求められる。このため、区独自の基準で幼稚園を活用する選択をしたという。

 今年、かきのみ園には全国各地の自治体から視察が相次ぎ、関心の高さを裏付けた。

 待機児童が200人を超える大阪市の担当者は「渋谷のやり方は魅力的だが、国の補助がないと独自では厳しい。国の幼保一体化議論の行方を見定めた上で、対策を考えたい」と話していた。

引用元:アトランティカ rmt